FM三重「ウィークエンドカフェ」2012年6月2日放送

今回のお客様は、尾鷲で定置網漁をされている柱掛丸の、濱田浩孝さん。
毎日決まった場所に網を張り、かかった魚を引き上げます。

今日も朝2時半に起きて、海へと向かいました。
そして、日の出前には作業を終えて港へ帰ってきます。
毎日おいしい魚を私たちの食卓へ届けてくれる漁師さん。
いつもありがとう。

■具体的に、漁師の仕事って?

朝の3時半に出港して、漁場に着くのが4時過ぎで、操業するのはだいたい1時間くらい。
市場に帰ってくるのが6時前。
今日ももう、仕事を終わらせてきたんですよ(笑)

漁師の仕事は、いろいろ手間がかかって大変ですね。
網の手入れがなかなか覚えられなかったんだけど、若いころは先輩がやってくれるもんで助かりました。
若い子は5年くらいはできないねえ。
技術的にも難しいし、網の構造がどうなっているかわからないんです。
定置網は、海底に設置してあるものだから、陸に上がった時、どうなっているのか…まったく想像つかない。
袋状に網を作ったりするんだけど、魚を誘導する『道網』という網が、おおよそ150m。
一番奥の、魚を捕る『箱網』でも30~40m。
大きすぎて想像できないでしょ?

捕っている魚は、基本は今はイワシだけ。
もうちょっとしたら鮪の幼魚…ヨコワが出てきて、秋になったら太刀魚やカマス、冬はブリ…同じ海で網を張っているから、季節によって捕れる魚も変わって来ます。

定置は、『何を捕りに行く』のではなく、待っている漁業なので、何が入って来るかは明日にならないとわからない。
まあ、季節によって回遊する魚はだいたい一緒なんで、前の日の漁の様子で、翌日用意する氷の量も決めますね。

定置網漁は、だいたい来る魚の季節が決まっていても、いろんな魚が入ってくるんですよ。
イワシとアジがごっちゃごちゃに入っていたり…それを船上ですぐに選別しなきゃならない。
何故かというと、アジなどは鱗が強いので、一緒にしておくとイワシの肌が傷ついてしまうんです。
肌が焼けたイワシが市場で並ぶということは、安く売られるということ。
最初の処理が重要なんです。


■朝が早くて自然相手の仕事は厳しい!

今、一緒に仕事をしているのは8人。
平均年齢65歳以上。スゴイでしょ(笑)
朝の早い商売は、若い子にはなかなか辛いかもしれないですね。
たまに入ってくる子もいるんだけど、夜遊んじゃって、朝起きれなくて結局休んじゃう…それで続かなくなっちゃう。
自分が25の時にこっちに帰って来て、それから漁師を始めたんだけど、その頃は、朝まで飲んで、そのまま寝ずに行っちゃってました(笑)
だって寝たら起きられないし1~2時間寝るくらいなら、起きていたほうがマシだし。
それで沖に行って案の定気持ち悪くなって、それでも何とか帰って来て。
昼ぐらいから寝て、また飲みに行ってました。
けど、結婚して子どもができたら、さすがにもう無理(笑)

自分は今、48歳だから、漁師になって23年目。
定置網を本当に理解できたのが30歳を越えたくらい…10年くらい経っていたかな。
それまではずっと、親父がいたもんで、別に覚えなくていいかな、と。
それが任されるようになって、自分でやらなと思って、必死で覚えた(笑)

責任を持たされると、仕事への気持ちの入りようが変わりますね、やっぱり!

漁師の仕事は自然相手だし、また、沖に出ていく漁師と違うので、魚を追いかけていくことができないので、もう、魚に任すしかない。
大量の年もあれば不漁の年もある、けど、誰かのせいにもできない。
だからこそ自分らは、魚がいつ来ても良いように、網を綺麗な形で設置して置かなきゃならないし、捕れた魚は、大事に市場まで持って行かないといけないんです。


■アオリイカを船上〆でブランド化へ!

今、取り組んでいるのは、アオリイカを船上で〆て鮮度を保つというもの。
ハンマーをアオリイカの目と目の間に脳みそがあるんで、そこをハンマーで叩いて、一瞬で脳死状態にするんです。
これは早いし傷つけない!

ハンマー〆は、以前から徳島では行なっていたんだけど、尾鷲ではそのまま。
桶に突っ込んで、真っ黒になったまんまのを売っていたんですよ。
でも、イカでも魚でも、苦しんで死ぬと鮮度が長持ちしないので、なるべく短時間で〆るのが一番大事。
捕って生きている状態で、すぐ〆る。

イカって泳いでる時は昆布みたいな茶色っぽい色をしているんだけど、ハンマーで叩くと、一気に真っ白に変わるんです。
それでもう、ちゃんと〆れた…ってわかる。
それからにがり成分を入れて10度に冷やした海水にアオリイカを浸けとくんです。
これは三重大の先生のアイデアで、尾鷲で初めて始めた独自のこと。
鮮度が今までと全然違う!

800g以上のアオリイカをこの方法で〆たものに『尾鷲漁協船上活〆(いけしめ)』と船名を記したタグを付けることで、尾鷲産のアオリイカをブランド化を目指しているところです。

今までは漁師と魚屋さんがバラバラで、顔を合わせることもほとんどありませんでした。
でも最近になって、『産地協議会』が発足してから、話す機会ができたし、チーム組んで尾鷲全体で尾鷲のイメージを上げていきたいと思っています。
料理屋さんに頼んで、アオリイカを使った料理を作ってもらったりね。

スーパーにも尾鷲産の魚を置いてもらって、「尾鷲産なら安心して買えるわ」とか言って欲しいですね。
今はスーパーでも、産地を明記するでしょ。
尾鷲の漁師としては、安心安全、いいものを届けないと…と、いつも思っています。